スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アゴラ

アゴラへ投稿しています。Blogosにても転載されています。(下記のリンク先)

アゴラの個人記事ページはこちら

BLOGOSの個人記事ページはこちら



スポンサーサイト

円高のメリットが見えない。見えないときこそ重要。

円高のメリットと言えば,海外のモノを安く買えるようになることです。けれども,これだけ円高が騒がれているにもかかわらず,どうやら多くの人がそのメリットを感じていないようです。(「円高恩恵、6割「感じない」=期待8割、落差大きく-消費者庁調査」時事通信)

それがなぜなのかを,ちょうど輸出入物価も含まれる(11月の)国内企業物価指数の統計が発表されたので図にして考えてみました。(ここでの4つの指数を2009年1月でそれぞれ100になるように調整しました。)

オレンジ色輸出物価指数(円ベースをまずみます。わかりやすくするために,この総平均の値を個別と解釈して考えると,2010年の初めに例えば110円だった輸入財は現在120円程度になったことになります。円高にもかかわらず価格が上昇しているので,全般では円高のメリットは感じられないはずです。

ところが,契約通貨ベース(ここではドルと捉える)では,140になっています。したがって,単純にこれも円で評価して,140円になっていたはずの輸入財が120円で購入できている,というのが円高のメリットです。このように目に見えないので,よっぽど注意深くなければ全般的なメリットは感じられません。

Eximprice

さて,ここまでの議論は比較的わかりやすいと思いますが,この図からは別の問題も見えてきます。今度は青色の輸出物価指数をみてみます。

契約通貨ベース(主にドル)のグラフ(青・点線)をみると,円高にもかかわらず2010年後半までドル価格は上昇していません。円高でドル価格を一定に据え置くと,円換算では輸出財の価格が低下したことになります。円高でもドル表示での価格がなぜ据え置かれるかは,価格の硬直性,プライシングtoマーケット,他国の企業との価格競争などが思いつきますが,ともかく,その分だけ円ベースでの企業収益は悪化します。

その後は徐々に契約通貨ベース価格でも上昇したのですが,2011年春以降から最近までの動きは問題です。企業は円高に対して,ドル価格を引上げないいどころか,むしろ若干引下げているようです。例えば,1ドル=90円だった収益が77円になったのみならず,さらにもとの1ドルをも引下げて75円になっているような状況です。このように,世界的な需要の減速,グローバル化による競争の中,円高によって輸出企業は非常に苦しい状況にあることが想像できます。

日本全体での差し引きではどうでしょうか。円高によって両矢印(2)が本来は縮まることで利得が得られます(交易利得)。ところが,これが逆に拡大してしまっています。契約通貨ベースの両矢印(3)の長さと比べると,小さくはなっていますが,本来あるべき円高のメリット分(両矢印(1)の長さ)は過小にしか得られていないようです。

私は,アメリカの経済状況と金利,中国の為替政策と中国とEUの貿易量,EUの金融・財政危機などなどをあわせて考えると,現在の日本経済の状況はまるで楽観視できないと考えます。対応としては,輸入物価においてエネルギー関係の影響が大きいはずですから,特にエネルギー政策が重要だと思います。そしてもう1つは円高を生かす政策です。

これらに失敗すると実質的な所得の低下,あるいは影響が偏ると格差拡大などがもたらされることになります。けれども,それは目に見える動きとはならないので,気づいたときには・・・となってしまいます。これについては,また次回,書くことにします。

テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

おかしな社会保障費の自然増

社会保障費「自然増」が毎年度1兆円超あると言われます。けれども,この「自然増」という言い方には違和感を覚えます。

( 平成23年度当初予算では社会保障関係費が前年度から約1.4兆円増加しました。以前は抑制策がとられていましたが,政権交代後に再度,自然増となりました。この自然増を維持するためには,だいたい2年に1度,消費税1%相当の増税が必要です。 )

子どもだと,1人が2人,さらに3人,4人と増えていけば,それだけ養育費などが増えていきます。ところが,親は増えたりはしません。自然増というのは,親が2人だったのが,なぜか3人,4人になっていく場合です。そんなことはあり得ません。だから,一般論としてはおかしいと思うのです。

現状では,社会保障費の自然増が認められていますが,税収にはそれに対応する自然増がありません。あたりまえですが,親が増えたのではなく子どもが減ったからです。

働く世代が減ってきて,しかも経済が成長していない状況では,社会保障費の総額は少なくとも増やすべきではないと思います。総額を増やさなければ,高齢化で1人あたり社会保障費は「自然減」になるはずです。

高い経済成長が見込めるのであれば「自然増」で問題ありません。ところが現状はそうでないどころが,さらに財政も厳しい状況です。

ですから,子どもが減ったことによる費用の自然増は,その現象を生じさせた世代がまずは負うべきだと思います。(人によっては子沢山の人もいるでしょう。けれども,考えてみれば,その子達の社会保障負担が大きくなれば,自分の親を支えることもままならなくなるはずです。)

現実的には,極端に社会保障費を削減すべきだと主張するわけではありません。ただ,消費税率を引き上げるにしても,上のような基本的な構造があるということを,30代(後半)の身としては言っておきたいです。(やがて私たちの世代にも同じ問題が降りかかると思いますが。)

テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

消費税率アップへの物語

政権交代以降,皮肉にも,社会保障の充実など格差解消を目指していた(?)のが,むしろ逆進性のある消費税率アップへつながってきたようです。ただ,これは必然だったのかもしれません。

-------------
例えば,ある国に年収が500万円の人達と1500万円人達がいるとします。

もし,税率が一定なら,1500万円の人の税負担は500万円の人の3倍になります。でも,実際には1500万円の人に500万円の人6人分と同じだけ負担してもらっています。(1500万円の人は余裕があるのだから,少し多く負担してもらおうということです。<累進課税>)

政府はこの収入に見合った支出をすれば良いのですが,「平等」とか「社会~~」を主張する政治家がばらまき政策をとると決意したとします。そして約10%だけ増税します。

問題は人数です。実は年収500万円の人は13人いて,1500万円の人は1人だけです。

平等が目的ですから,1500万円の1人だけに増税しましょう。すると,その人にだいたい500万円の人の8人分負担してもらうことになります。

忘れていました。政府の支出はもともと約半分が借金でした。借金も何とかしなければいけません。でも借金しないようにしようとすると,1500万円の人の税率は120%になってしまいます。断念。

それでは,政策を変更しましょう。でも,大幅に支出を減らそうという訳にはいきません。やはり「社会~~」政策が重要です。

今度はみんなに負担してもらうしかありません。埋蔵金も実はないということがばれてきました。さらに,収入がない人も10人くらいいます。消費税率アップにしよう?

-------------
これまでは日本の消費税議論はこのように進んできたと感じます。(単純に計算しています。人数比は国税庁『民間給与実態統計調査結果』を基にしています。ただし,男性のみ。税額関係は,年収から給与所得控除だけ控除して計算しています。)

学生と話していても,「累進課税でお金持ちからより多くとれば良い」という意見がでます。それはそうかもしれませんが,たいていはお金持ちの人数と財政での必要額の試算のバランスについて勘違いが生じています。

簡単に言うと,いくら富裕層に増税しても税収増に限界はあるし,その限界は一般に想像されるよりもずいぶんと低いということです。(下に国税庁『民間給与実態統計調査結果』で男性の年収分布を示しました。)

給与

最後に話は飛びますが,財政状況では本来は(ずっと必要な)社会保障費と,(一時的な)復興支出や成長戦略は分けて考えたいところです。おそらく多くの人は全部同じに捉えて,増税反対・容認の議論を聞いているのではないでしょうか。やはり,根本的には恒常的な社会保障の問題をなんとかしないと(削減)だめだと思います。


テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

仏銀とEU債務危機

Reuters「S&Pがイタリア国債格下げ、仏銀は圧力の高まりに直面
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23271720110920
というニュースがあったので調べてみました。

 イタリアの債務危機が本格化すれば,その影響はギリシャに比べて格段に大きいはずです。内閣府『世界経済の潮流 2011年 I』では「金融機関の貸出状況をみると、南欧諸国等向けの与信は、ドイツ及びフランスの金融機関に集中している。そのため、財政状況が悪化している南欧諸国等への市場の懸念は、これらの国々の国債保有や与信残高が多いヨーロッパの金融機関の経営に対する懸念へと波及するおそれがある」と指摘してます。

<参考図>
第2-4-17図 http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sh11-01/s1-11-2-4/image/s1-11-2-4-17z.gif
第1-4-31図(2010年版) http://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sa10-02/s2-10-1-4/s2-10-1-4-31z.html

 そこで,BIS(国際決済銀行)が作成しているConsolidated banking statisticsで,国別の銀行貸出等の状況を図にしてみました。(本当は国債だけを見てみたいのですが,国別ではその統計が見つからなかったので全与信のものになっています。)

 まず,イタリアに対する与信残高(consolidated foreign claims)(2011年3月末)を銀行の国籍別にみると以下のようになります。イタリアへはフランス国籍の銀行からの貸出
が突出して多いことがわかります。(なお,政府部門への与信は全体ではおよそ4分の1程度ですので,フランスでもその程度だと予想しています。)

F_claims01

 今度は逆に,フランスドイツ,そしてついでに日本の銀行の対外与信残高を貸出先の国別に積み上げて棒グラフにしてみました。ここでは,ヨーロッパ諸国のうちで額が大きいものと米国のみを示しています。(ここでの合計額は与信残高合計ではありません。また,対外と書いていますが,国内発行の外国銀行向けも含まれます。)

F_claims02

 このグラフからわかるのは,フランスは単純にイタリアへの貸出が多いだけではなく,その与信全体に占める割合も大きいということです。ドイツは,イタリア向けの額はそれなりにありますが,全体に占める割合は小さくなっています。(日本はイタリアへの貸出はごく小さいです。(アメリカへは多すぎです。))

 仏銀からイタリアへの与信残高は以下の図のように2006年から2008年にかけて急激に増大しています。一方,独銀はスペイン向けが急増していますが,仏銀と比べて偏りが少なくなっています。

F_claims03

 このように,イタリアの問題はフランスの問題です。そして,ギリシャ,ポルトガルを超えて債務危機がイタリアで本格化してしまえば,EUはさらに厳しい事態に直面します。

 日本の経験からいえば,早めにEU全体の負担で仏銀の不良債権を処理し,(短期の混乱は耐えて)長期で金融市場を健全化させるべきでしょう。けれども,EUは金融政策は統合されていますが,財政は各国負担になります。仏銀の負担はフランスの財政が多く負うとすれば,ワースト・シナリオとしては,
   イタリア財政危機 -> フランスの銀行危機 ->フランス財政・経済へ波及 ->(デモ・暴動) -> EU崩壊
というような流れです。

私は大学で日本経済の講義を担当していますが,今はほとんど世界経済を調べて準備しています。なかなか難しいです。

テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

検索フォーム
プロフィール

釣 雅雄(つりまさお)

Author:釣 雅雄(つりまさお)
北海道小樽市生まれ。日本学術振興会PD,一橋大学助手を経て,2006年より岡山大学大学院社会文化科学研究科准教授。日本経済論や経済政策論などを担当しています。博士(経済学,一橋大学)

リンク
最新記事
カテゴリ
RSSリンクの表示
QRコード
QR
最新トラックバック
最新コメント
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。